進化するBリーグのアリーナ・エンターテイメント、大型ビジョンの映像切り替えに TriCaster 2 Elite が活躍

進化するBリーグのアリーナ・エンターテイメント、大型ビジョンの映像切り替えに TriCaster 2 Elite が活躍

ダイナミックな試合演出を支える放送レベルの安定性と、状況に合わせリアルタイムに対応できる柔軟性を TriCaster® で実現

“感動を伝える” をコンセプトに、映像と情報に関わる技術サービスを 30 年以上提供し続けている株式会社テクノネット(以下「テクノネット」)。これまではテレビ局や中継現場向けスポーツコーダ®︎ (ソフトウェア) の製造 / 開発 / オペレートまでをメインのサービスとして提供してきたが、最近ではスタジアムの大型ビジョンや、インターネット配信など映像制作の ”出口” が多様化し、同社で扱う機材・技術の幅も広げている。

今回、同社が大型ビジョンの映像演出を担当した、プロバスケットボールチーム『横浜ビー・コルセアーズ』の試合会場 (横浜武道館) を取材。NewTek 社のライブ映像制作システム NewTek TriCaster® 2 Elite を活用した、アリーナ・エンターテイメントの舞台裏に迫る。

関連情報

TriCaster® は、イベント、ライブ放送、ストリーミング放送、社内会議、セミナー、企業ビデオ、商品説明などの様々なコンテンツ配信に利用できます。ネットワークに繋げるだけで、簡単に番組制作、ライブストリーミング配信、配信しながら同時収録も可能です。

横浜ビー・コルセアーズ / 株式会社テクノネット

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TriCaster を使った最新活用事例

TriCaster は、オールインワン・ライブプロダクション・システムです。

©︎B-CORSAIRS/T.Osawa

ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(以下:Bリーグ)のトップディビジョン「B1」に所属する『横浜ビー・コルセアーズ』。2010年に決定したチーム名の「コルセアーズ (CORSAIRS)」は、“海賊達 / 海賊船” という意味を持ち、横浜という都会的なイメージの中でも、海賊のように危険を覚悟しながらも進んでいく “挑戦的” なイメージがチームブランドのコンセプトになっている。

横浜ビー・コルセアーズ 広報・プロモーション部 秋定太一氏

「決めるとこは決めるけど、遊び心も持ち合わせている。“海の男の生き様” みたいなイメージを、アリーナでの会場演出にも取り入れています。」

 

横浜ビー・コルセアーズ 広報・プロモーション部の秋定 太一氏は、まさに華やかな海賊船を取りまとめる船長のように取材に答えてくれた。

アリーナ・エンターテイメントを追求した ライブ映像制作システムの導入

©︎B-CORSAIRS/T.Osawa

取材日に横浜ビー・コルセアーズのホーム試合が開催された横浜武道館は、アリーナ中央、高さ約 15 mの天井に吊り下げられた 4 面長方形の大型ビジョンと、コートサイドライン沿いに設置された LED パネルがまず目を引く。ホーム試合を盛り上げるため、これらのビジョンを通して、1 日約 50 〜 100 もの映像素材が、演出用の台本に沿ったタイミングで繰り出されていく。そこで活躍するのが NewTek 社のライブ映像制作システム TriCaster2Elite だ。

 

試合前のリハーサルではアップテンポな曲に合わせて、照明と映像演出が煌びやかに交差する…まさに ”エンターテイメント” が繰り広げられていたが、3 年ほど前は

秋定氏「 Bリーグが掲げる 3 つのミッションに『世界に通用する選手やチームの輩出』、『エンターテイメント性の追求』、『夢のアリーナの実現』があります。競技力の向上だけでなく、“体育館で競技を行っているだけ” のイメージを払拭した “アリーナ・エンターテイメント” の追求と実現に向けて、多くのクラブが映像演出用の大型ビジョンや LED パネルをアリーナ会場に導入するようになりました。

バスケットボールの知識がないお客様でも、会場に入った瞬間『わぁ!』と驚くような、普段見ていないものを見に行く体験を提供することが、会場演出チームのミッションとなっています。」

 

当初は横浜ビー・コルセアーズの演出チームが映像制作から演出までを一手に担当していたが、2020 年頃に上述の LED パネルが Bリーグから同チームにも支給されると、大型ビジョンを含めた映像送出 (画出し) のパートをテクノネットに依頼することとなった。バスケットLIVEやスポーツナビをはじめとする様々な配信先を考慮すると、パートナー企業のロゴなどを表示する LED パネルを含めた映像演出・ミス防止が素人だけでは厳しく、機材手配からオペレーションまでをサポートするテクノネットに声がかかったのだ。

多様化する映像演出・配信先を支える TriCaster® を採用

テクノネットは、映像制作の基本となるスイッチング・収録・配信・合成・テロップ作成の機能を 1 台に搭載した、オールインワンの映像制作システム NewTek TriCaster 2 Elite を中心に今回のシステムを組んでいる。

TriCaster は複数のカメラから入力されたライブ映像に編集・加工・合成などを加え、最終的にインターネットでライブ配信したり、内蔵ストレージに配信映像を保存したり、あるいは演出用の動画素材をビデオ再生して利用することも可能なオールインワン・ライブ映像制作システムだ。多種多様な演出をシステム内で可能にする映像合成ツールと、幅広い製品ラインナップから使用用途に応じて選択できるのが特徴的な製品シリーズである。

テクノネットは TriCaster シリーズを 10 年以上使用し続けており、2021 年の秋頃には同社 5 代目の製品となるTriCaster 2 Elite を導入。以前は TriCaster 8000 を使っていたが、IP 映像伝送方式 NDI の本格導入も視野に入れ、フラッグシップモデルへの機材更新に至った。

テクノネット ソリューションセンター運用技術部 部長 / テクニカルディレクター 山﨑洋則氏

同チームのホーム試合で映像演出の機材オペレーション / スイッチングを担当する、テクノネット ソリューションセンター運用技術部 部長 / テクニカルディレクター 山﨑 洋則氏に話を聞いた。

山﨑氏「以前 B.LEAGUE 公式映像で横浜ビー・コルセアーズの中継制作を担当していた際に、 TriCaster でスイッチングを行っていたので、今回の演出システムでも使い慣れている機材を選びました。主に携わっているスポーツ中継、ゲーム番組、企業系イベントの配信現場でも、 PowerPoint や出演者の顔出しワイプ、固定テロップなどを組み合わせたレイアウト構成や、音の調整もしやすい TriCaster シリーズをシステムの中心に組むことが多いです。」

システム構成

今回のシステムで TriCaster 2 Eliteは、会場に設置された LED パネルと大型ビジョンへ映し出す映像・画像ソースの切り替えと、膨大な素材の管理に活用されている。具体的には以下の素材がスイッチング用として、TriCaster 2 Elite に取り込まれている。

秋定氏が制作する演出用素材

CM・選手紹介などのプロモーション映像

リーグから提供される横浜ビー・コルセアーズの試合ハイライト映像B.LEAGUE 公式中継映像(SDI 経由で伝送)

NDI対応スポーツコーダ®︎ (スコア表示用)

会場内の観客向けの演出がメインであるため、試合中継用のカメラ映像はほぼ 1 本とシンプルだが、エンターテイメント性を高めるために、膨大な量の演出用素材が TriCaster 2 Elite に仕込まれている。

横浜ビー・コルセアーズでは、相手チームのフリースロー時に行う "ブースターディフェンス" やタイムアウトの案内など、試合中に繰り返し出す素材はあらかじめ TriCaster のシステム内部に保存しており、会場の様子に合わせてリアルタイムに切り替えている。観客にとって飽きの来ない演出を創り出しているのだ。またリハーサル後やトラブル時にも演出・素材の変更が入るケースが多く、その場で演出責任者の秋定氏がジャッジを下すことで、シームレスな演出転換を可能にしている。

アリーナでは演出内容が日々変わるため、敢えて音と映像は同期していない。今回の場合は、①音響に合わせて山﨑氏が映像ソースを切り替える、もしくは②オーディオソースを音響チームへ渡して VTR 音として出してもらう、この 2 パターンで画音を連携させている。

基本的に横浜ビー・コルセアーズが行うホーム試合の演出ではテクノネットが機材協力・オペレーターとして同行し、今回紹介した横浜武道館だけでなく、チームのホームアリーナ 「横浜国際プール」でも同じシステムを採用している。

放送レベルの安定性と、演出変更にも即座に対応できる柔軟性

失敗の許されないライブ配信にも最適な画出しの “安定性” と、急な演出変更にも臨機応変に対応できる “柔軟性”、そして数多くの映像ソースが必要となるアリーナ演出の現場でこそ、TriCaster 2 Elite の機能が役立つと山﨑氏は語る。

山﨑氏「当日の状況に応じて作成されたビジョン出し用の新しい素材が来ても、すぐに対応できるのが TriCaster 2 Elite が持つ何よりも便利な機能だと思います。特に今回のようなアリーナ会場では各所に専用機材が導入されていて、専用フォーマットでの書き出しが必要なケースも多いですが、そのような場面でこそどのフォーマットのデータでも読み込めて、すぐに素材・レイアウト変更にも対応できる TriCaster 2 Elite の ”表現力” が、最大限に活かされていると思います。」

 

Bリーグのレギュラーシーズンは 10 月に開幕し、5 月初旬に閉幕する。約 7 ヶ月間で 1 チームあたり 60 試合を戦い、ホームとアウェーで 30 試合ずつ行われる。同チームの演出部隊が動くのはホーム試合。1 シーズンに 30 回ほど本番を迎えることになるが、試合ごとに進行台本が用意され何度もリハーサルが行われる。素材数も多く画出しの頻度とボリュームは膨大なものとなる。シーズンを通して会場演出を成功裏に進めていくためには、高度なオペレーション能力が求められることは容易に想像できる。テクノネットにシステム構築からオペレーションを一任したことで、安定性の高いシステムでの運用が可能になり、よりクリエイティブ面に集中できるようになったと、秋定氏は強調する。

秋定氏「最大限ミスが起きない工夫を取り入れながら、膨大な素材管理と画出しを担当してくれるオペレーター 山﨑さんのおかげで、演出チームの他メンバーが各々の役割に集中できるようになりました。ビジョンに出す素材はリハーサルや会場の様子に合わせて変更を入れることもしょっちゅうです。といっても、私が制作しているものが多いんですが (笑)

 

TriCaster 2 Elite を操る山﨑さんに最新の素材を渡せば、すぐに変更を反映した映像 / 画像をビジョンに出してもらえるので、今回のシステムと山﨑さんは演出チームにとって、とても頼れる存在です。」

今後の展望

今シーズンのホーム試合から、TriCaster 2 Elite とテクノネット社が開発したスポーツコーダ®︎を NDI で繋げて、IP伝送によりスコアを入れるようにしている。将来的にはスタッツデータ連携も含めたスコアボード演出を行い、会場のブースターさんがより楽しめるコンテンツにしたいと、山﨑氏は語る。

山﨑氏「今回の場合は、スポーツコーダ®︎と vMix へのソース渡しを NDI 経由で連携していますが、将来的には今回の Bリーグのように様々な業者が入っている現場でこそ、NDI 対応製品を導入してみたいと思っています。例えば中継部隊からは SDI 経由でソースを受け取っていますが、NDI に変換するコンバーター製品などを揃えれば、意外と簡単に NDI へ移行でき、ケーブル敷設等の現場作業の負担軽減につながるのではないかと思っています。

 

横浜武道館のアリーナではオペレーション卓の前方 (コートの中央) に天吊りの大型ビジョンが設置されているので、今どの画が出ているのか確認しやすいですが、別のアリーナ (横浜国際プール) ではオペレーション卓の視界外 (ゴールの奥) にビジョンが設置されているので、MC 担当の方が確認しにくい場面もあります。今後は NDI を積極的に導入して、確認用モニターを各所に配るのにも取り組んでみたいと思っています。様々な現場で IP ビデオ伝送の信頼性を検証しながら、NDI の活用方法も見定めていきたいですね。」

©︎B-CORSAIRS/T.Osawa

Bリーグでは、2026年から『NEW B.LEAGUE』と呼ばれるリーグ構造改革を始動予定で、最上位ディビジョンとなる「新B1」はさらなるアリーナ・エンターテイメントの向上が課題となっている。

秋定氏「 “試合会場に入れば、そこは海賊船!” 将来的には技術面・演出面の両方をパワーアップさせて、アリーナに来ればどのようなお客様でも楽しめる、そんな空間作りを目指したいです。」

 

最新技術と機材を取り入れ、さらなる進化を見せるアリーナ・エンターテイメントの世界。その舞台裏では『いかに楽しませるか』というエンターテイメントの真意と向き合う、熱きドラマが繰り広げられていた。

導入事例

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